波動方程式の解-グリーン関数-遅延ポテンシャル

マクスウェルの方程式の帰結は、

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である。φは電位、Ax、Ay、Azはベクトルポテンシャル、ρは荷電密度、
ix、iy、izは電流、ε0は真空の誘電率、μ0
真空の透磁率である。cは光速である。
 このうち(1)を解くことを考えよう。(1)が解ければ(2)、(3)、(4)も解ける。これは波動方程式と呼ばれる。
 今、

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を満たすGがあったとする(このGはグリーン関数と呼ばれる。)。  そうすると

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は(1)の解である。
 なぜなら(6)を(1)の左辺に代入すれば

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となるからである。
 従ってGを求めればφが求まる。(5)式から求める。
 Gを

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とフーリエ展開する。
 (8)を(5)に代入すると

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であるから

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よって

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を満たすグリーン関数gを求めれば(8)よりGが求まりφが求まる。
 (11)の解gの一つは

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である。  (12)を(8)に代入してみよう。Gは

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 (13)を(6)に代入して(1)の解、電位φを求めてみよう。

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となる。
 ρ(XYZ,t-r/c)は空間点(XYZ)における時刻t-r/cにおける荷電密度である。r/c秒前の(XYZ)における荷電密度を
表すことから(14)は遅延ポテンシャルと呼ばれる。光子がrを伝って到達する時間r/cだけ遅れるわけである。

 ちなみに(11)の解の一つが(12)であることを証明しよう。

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とフーリエ展開しよう。  (15)を(11)に代入すれば

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だから

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これを(15)に代入すれば

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 kx-ky-kz直交座標を用い、r=(x-X,y-Y,z-Z)を
kz軸と一致させると、極座標(k,θ,ψ)で、
kx(x-X)+ky(y-Y)+kz(z-Z) は内積krcosθに等しい。また体積要素dkxdkydkz=dVは
dV=k2sinθdkdθdψ
となるから

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よって

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でβ→∞で(22)は0となる。よって(21)は閉曲線Cについての積分に等しいと仮定すると

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閉曲線Cに極-ω/cを含めずω/cを含めると、

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 (コーシーの積分定理)

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 (コーシーの積分公式)
よって解(12)が得られた。

参考文献
1)朝倉現代物理学講座「素粒子」原康夫 朝倉書店 1984年
2)新物理学シリーズ12「電気力学」平川浩正 培風館 昭和56年
3)速修「物理数学の応用技法」大谷俊介 プレアデス出版 2012年


メモ

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